As You Like It !

All the world's a stage, and all the men and women merely players. 独断と偏見に満ちたエンターテイメント作品紹介です。めざせエンタメの伝道師!

大地(Social Distancing Version)

*本記事にはネタバレが含まれます。公式でもあまり事前情報が出ていませんし、予習しないで舞台を観た方がおもしろいと思うので、ご観劇後にお読みください。

*台詞の引用は私のおぼろげな記憶に基づくので正確ではありません。

*7/11配信ありますのでぜひ!詳細は↓真ん中あたりです。

stage.parco.jp

 

 

またブログの更新をサボってしまった。。。みなさん自粛お疲れ様です。4ヶ月ぶりに観劇再開!!

 

パンフレットには、稽古場の写真も、出演者の対談もない。あるのは空の客席の写真。「今日この舞台に立てることを感謝します。」という相島一之さんのコメントにハッとする。上演企画自体はずっと前からあったはずだけど、このパンフレットと今から観る舞台は、この状況を踏まえて作られたものだ。

 

三谷さんの思いを込めた開演アナウンスが入り、ドラが打たれて始まる。

狂言回しは濱田龍臣くん。一番台詞が多いのでは?爽やかでとても良い。

 

セット転換はなし。スカスカの板打ちの壁はボロ家の表現であり、換気対策であるそう。

三谷さんならきっとそうしてくれると信じていた通り、「昨今の状況を踏まえ、仕方なく妥協してこうなりました」なんて演出にはなっていない。役者同士の接触がなくても、違和感は全くない。私たちの三谷幸喜はそんなものには決して負けない。

観客だって負けない。殴らなくても「あ、今殴ったな」とわかるくらいの想像力はある。

 

「なぜ芝居が打てない?なぜ!!」

ここにいる全員がそう思っているのではないか。芝居を禁止されるなんて、半年前には誰が思っていただろうか。私も「芝居を観ないと生きていけない人」です。

コロナがなくても同じ作品だったかもしれないけれど、今聞くからこそ重みが違う台詞が多々。

 

大泉洋さん演じる部屋のリーダー格チャペックは「俺はここにいたいんだ」と心情を吐露する。彼は単純に良い人ではない。陰のある大泉洋がとてもかっこいい…!

 

笑いの後の緊張感がすごい。いくら指導員ホデクさんが温厚に見えても、立場は絶対的に違い、収容者たちに拒否権はない。

 

2幕冒頭は散々笑わせてくる。NINAGAWAシェイクスピア辻萬長さんの安心感。

演劇には一切興味のない偉い人ドランスキーさんは、演劇の力で変わったかと思いきや…あなたさっき「お父さん!」って言ったじゃないの…

現実は決して”やさしい世界”ではない。終幕までは怒涛のよう。

 

「私は芝居が下手なせいで死ぬのか。傑作だな」

 

「我々は重要なものを手放してしまった。観客だよ」

役者ではないけれど、私も人前に立つ仕事をしていたので、観客の大事さを知っている。観客がいないと、無理。

 

「たとえ明日、地球が滅びるとしても、私は大地にりんごの木を植える(マルチン・ルター)」

この先どうなるかわからないけれど、今日やるべきことをちゃんとやればいい。

 

大丈夫だ、演劇は新しい形でちゃんと続いていく。そんな確信を胸に劇場を後にしました。

やっぱり芝居はパソコンの前でじゃなくて、劇場で本気で観ないとさ!!