As You Like It !

All the world's a stage, and all the men and women merely players. 独断と偏見に満ちたエンターテイメント作品紹介です。めざせエンタメの伝道師!

わたしを離さないで カズオ・イシグロ

舞台の感想ばかり書いているので、久しぶりに本の話を。

梅雨が明けまして、夏の青空が広がっておりますが、

この本のイメージはイングランドの曇り空。
寂寥感とデッドエンド感。
 
このニュースはご存知でしょうか?
「ブタ体内でヒトのiPS臓器作成」
iPS細胞を使って、ブタの体内でヒトの臓器を作り、
その臓器をヒトに移植して、ヒトの病気を治すわけです。
(こういう科学ネタとか引っ張ると本業っぽくていやだな、、、)
 
先日、小さな子に「この豚は死んじゃうの?」と聞かれました。
たぶん、死んじゃうんだろうね・・・
 
そして、ブタとヒトを同一視するわけではないけれど、この本を思い出しました。
 
ヘールシャムは実際にあるわけではないよね?フィクションだよね?
本当だったら辛すぎるじゃないか。
でも技術的には、きっと近い将来可能になる。
「クローン人間を、臓器提供の使い捨ての道具として利用すること」が。
 
科学において「できること」と「やっていいこと」は同じではない。
科学は「たのしい、おもしろい、すばらしい」だけでは絶対にない。
科学は人を殺せる。ロケットは戦争兵器として発展した。化学を応用すれば毒ガスを作ることができる。
そして、科学の実験はショーや見世物ではない。
 
Lost Corner、カセットテープ、Never let me go.
「提供者」「介護人」「保護官」
抑制された冷静な一人称の語り。
この先のことは書いていないけれど、キャシーも死んでいくということは容易に想像できる。
現実にこんな悲しい存在が生まれませんように。
 
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)